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アナログレコード「アリス」、5月下旬リリースへ向けて制作快調! Report Vol.2 [2020/3/31]

先日、その模様をお伝えしたステレオサウンドの新作アナログレコード「アリス」のマスタリング作業に続き、先頃、マスタリングの終った384kHz/32ビットのデジタルデータをアナログレコード化するためのカッティング作業が、東京・青山のミキサーズラボ/ワーナーミュージックマスタリングにて行なわれた。今回のカッティングは、名作「ビッグバンド」シリーズなど、数々の超高音質盤を手掛けてきた北村勝敏氏にお願いしている。

北村勝敏・ポリグラム、日本ビクターを経て、2017年よりミキサーズラボ とエンジニア契約。さまざまなレーベルで、これまでに8,000タイトル以上をカッティング。2019年 第26回日本プロ音楽録音賞 アナログディスク 特別賞 受賞

今回マスタリングを担当したのは、谷村新司との親交が厚く、レコーディングエンジニアとして、その制作に携わってきたミキサーズラボ の三浦瑞生氏。一方、北村さんは谷村新司や堀内孝雄のソロ作品をカッティングしたエンジニアである。バンドのコンセプトや特質をよく知る北村さんにカッティングエンジニアとして白羽の矢が立つのは、もはや必然。三浦瑞生+北村勝敏というエンジニアの組合せは、アリスの音楽をありのまま、そのすべてを音にしてオーディオ愛好家のみなさんの手元に届けようというコンセプトそのものだ。

384kHz/32ビットで制作されたマスター素材を波形でチェックする。ここでの分析は、この後に続くテストカッティングにとって、大変重要な情報となる

今回のカッティングは、このレコードを手にしたオーディオ愛好家がその盤面に針を落としたとき、三浦瑞生氏が384kHz/32ビットで制作したデジタルマスターに出来る限り近いサウンドとして音楽を取り出し楽しめる、そこを目指して行なわれた。

「レコード盤になったとき、その音は384kHz/32ビットデジタルマスターとは当然異なってくるのですが、その差を感じさせないような調整を行ないながらカッティング作業を進めるのがポイントです。レコードは音楽信号を物理的な音の溝にし、再生するときはその溝をレコード針で擦って再び音にするという仕組みですが、レコード針では再生しきれない音もあるのです。それがヴォーカルでいうところの子音の強調感として現れてくるので、そこは少し補正する必要がありますね。また、レコード盤になったとき、デジタルマスターが持っていた音のイメージに近くなるような、仕上がりを見越した周波数特性の微調整も加えます。ただそれは、ここで音づくりをしている、という意味ではありません」

テストカッティングされたラッカー盤にレコード針を下ろし、デジタルマスターとの間に音のイメージの変化がないかを確認する。カートリッジ、フォノイコライザーにははいくつかの種類が用意されていた

ラッカー盤へのカッティングにあたって行なわれる調整は1曲ごとに実施される。それは曲によって音の大きさや、使われる楽器などによる音質、あるいは歌い方の違いによる声質の変化などによって着目するポイントが異なるからだ。1曲ごとに、①デジタルマスターの音を聴く→②ラッカー盤へテストカッティング→③そのラッカー盤にレコード針を下ろして音を聴く、という作業が繰り返される。出てきた音が、デジタルマスターの持つ音のイメージと異なっている場合は、また①からやり直す。満足いくまで、この作業が繰り返されるわけだ。

「この作業には、一般向けレコードで行なうカッティングとは桁違いの時間を割いています。きちんと整備されたレコードプレーヤーシステム、そして本格的なオーディオシステムで再生されることが前提ですから、今回は『攻めのカッティング』を意識しました。本作に収録される予定の各曲は、リリース当時、再生機器の性能やグレードに関わらず、それなりのよい音でアリスの作品として楽しめることを想定した制作が行なわれていたはずで、針とびや音の歪みを防ぐためにマージンを持たせた、やや保守的なカッティングになっていたと思いますから」

時間をかけて音の職人たちが挑むステレオサウンド盤「アリス」。丁寧かつ繊細で、攻めの制作姿勢が一体どんなオーディオ体験をもたらしてくれるのか? 発売は5月下旬、今からそのレコードに針を落す日が待ち遠しい。

Published in カッティング